はじめに

近年、全国の釣り人の皆さんから「最近、ウグイやオイカワが全然釣れない・・・」「なんだか水辺の様子がおかしい・・・」という声を多くいただくようになりました。

 

日本の釣りは、古来より食料の確保や庶民の娯楽として長きに亘って多くの国民に親しまれてきました。ところが15~20年程前から、日本の河川や湖沼からフナ、オイカワ、ウグイ等の淡水魚が激減しております。BODやCOD等の水質基準や透明度等は年々向上しているにも関わらず、何故か全国の大半の内水面で大幅に減少しております。この事は、江戸時代初期以降400年間で初めての事です。

 

また、環境省が平成25年(2013年)2月に第4次レッドリストを公表しました。

図表
その中で、日本の淡水魚の評価対象種数(400種)に対する絶滅危惧種数(167種)の割合は42%、また、準絶滅危惧種や絶滅の恐れのあるもの等を入れると253種(63%)と、昆虫(1%)や鳥類(14%)等、他の生物(昆虫他)10分類群(約4万種)に比べて最も高くなっています。また、絶滅危惧種の数はレッドリストの改訂の度(5~8年毎)に増加し続けていることから淡水魚の保全は重要課題です。
このような絶滅危惧種の魚類の多くが二次的自然である水田や水路、その周辺水域に生息しています(資料後述参照)。

 

その翌年出された環境省をはじめとする有権者による淡水魚保全の為の検討会での発言議事録
【抜粋】
座長が「提言が水田の生態系も対象としている事を考えると鳥も含まれる。魚が増えることでサギなどの鳥が来る。そのことが米の付加価値を上げる。淡水魚を中心とした提言であるものの、鳥との関係をどこかで言及しても良いのではないか。水田の水質についてだが、農薬を入れないと爆発的に魚が増える。水田は浅くて暖かいからである。昔は佃煮にした。農薬については、どこかに書いておくべきではないか。農薬をやめるという言い方ではなく、減農薬や無農薬にした場合、生態系に効果があるというニュアンスでどこかに書く必要があるのではないかと思う。それが生態系をよくすることになり、地域も活性化し、それがツーリズムの資源となる。また、また、生態系を豊かにする事で地域が活性化する事ももう少し付け足しても良いと思う。魚を中核にしながらも、鳥を含めて自然全体の豊かさが広がり、地域の活性化につながっていくという事を書いても良いと思う。小山市の渡良瀬遊水地では、実際に水田の魚を佃煮として利用している。ふれあいの場については、都会の人達が来て遊べる雰囲気になると良い。」
座長からの発言であったにも関わらず、最終提言の中には、農薬が淡水魚の生息に大きな影響を及ぼしている事等が全く入れられていません。
同様に、2013年農水省から出された減農薬・無農薬に対しての補助支援政策でも、減農薬・無農薬により多くの生き物が戻ってくるという結果が出ております。

図表

 

淡水魚減少の原因究明のため、当会において調査・研究・情報収集をしてまいりました。そして、現段階で様々な要因が考えられる中で最大の要因は全国の多くの事例からも殺虫剤(ネオニコチノイド系、フィプロニル等)や除草剤(グリホサート)などの農薬やPFAS(ピーファス)などの化学合成物質が河川に流入したことによる生態系の変化が大きな要因ではないかと考えています。

 

特に農薬については調査の過程で、欧米諸国では多くの国で禁止または規制がかけられているにも関わらず、日本では直近10年間でも取り扱い種類も使用量も増加している事もわかりました。併せて、農薬の残留基準が海外と比較して我国が大幅に緩い事も知りました。
そして、現在、海外だけではなく日本の中でも多くの研究者や有識者をはじめ200を超す全国各地の市民団体、環境保護団体、農家、農業団体、自治体、弁護士団体、企業、生協等から、自然環境や生態系、国民の健康を守るためにネオニコ等の農薬の使用を禁止・規制する運動(ネオニコフリー運動等)が起きていることも知ることができました。

 

私たち公益財団法人日本釣振興会は、設立後54年が経過をしておりますが、その設立目的の中に

  1. 魚族資源の保護増殖
  2. 日本の健全な釣りの振興
  3. 水辺(自然)環境の美化保全

があります。

 

日釣振として、3つの設立目的に係わるこの問題の解決を図るため、また、水辺の監視人である釣り人として、水辺の異変に警鐘を鳴らし日本の自然環境、生態系、日本の農業や食の安全、国民の健康を守るため、そしてなにより、未来の釣り人に禍根を残さないためにもこの化学合成物質の問題に対して行動していくこととしました。

 

又、欧米の多くの研究機関から、ネオニコチノイド系農薬が淡水魚を含む水生生物へ有害な影響を及ぼすと報告されています。(別紙参照)